ー接触ー1

夕暮れの街、人々は仕事を終えて帰宅に、そしてこれからのお楽しみ
にと向かう時間。

葦原涼はこの街を分断する国道41号の歩道にバイクを止めて缶コーヒー
を飲んでいた。

葦原涼は帰るべき家はない、以前住んでいた家はすでに引き払い
バイクひとつで旅をしている、もともと友達を作ることが下手で無愛想と
いうことも関連しているが、もっと大きな原因があった。

それは、人類の終わりに関係する。

それは 人の成り立ちに関係する。

それは 史上もっとも大きな戦いに関連する。

抱えきれないさだめと運命に葦原涼は戦いつづける、だが今は更なる
戦いが迫っている事を知るよしもない。

「まずいな・・・・もうそろそろオイル交換しないと燃費ががた落ちだ」
コーヒーを飲み終えた涼はひとり、自分に言うようにぼそりと言った。

涼の愛車 XR250は東京での酷使とこの旅の疲れからか
だいぶ調子を落としていた、メンテンスをするべきか涼は考えていたのだ。

「!」
涼はかすかに聞こえる悲鳴を耳にした。 普通の人間なら聞き取る事の
できない声だが 涼にはそれを聞き取ることができた

迷わずヘルメットをかぶると一直線にその声の方にバイクを走らせた
歩道を突き上がり、隣の大きな公園をバイクは走る抜ける。
もちろんバイクで進入して良い場所ではないが、すでに涼にはそんな
ことはおかまいなしだ。

バゥウウン!
2Mはあるコンクリートの坂を軽々と涼のバイクはジャンプした
キィイイッ!

公園の端にある、広場では一人の女が目の前の惨状をじっとたちすくして
いた。

その惨状・・・ 4〜5人だろうか 広場の真中に倒れふしていた
だがその誰もが もはや人であった事すらわからぬ状態で血の池に
浮かんでいたのだ。 

瞬間、涼は何故この女だけが?ということとその死体達のありさまから
東京での事件などを思い出していたが、なにか違うとも感じていた。

「おい!大丈夫か?」
バイクを止めて女に近づくと完全なショック状態で立っているのも
やっとという風だ。

「あぁああ・・ナイフで脅されて・・金を・・お金を出せって・・でも
いきなり倒れて・・・いきなり・・」
説明しようとするがまったく、言葉がつながらない、しかもそれだけ言うと
気絶してしまった。
「おいっ! おいっ!・・だめか・・・はっ!!」

涼はその女を地面に寝かせると、慎重な面持ちで周りを伺った。

「何者だ?!」
居所のわからない相手に話すようにおおきな声で涼は叫んだ。

「・・・ナニモノダ・・」
その声はまるでオウム返しのようにどこからともなく帰ってきた。
機械的だがさっきの涼の声にそっくりだ。

「・・・・・」
涼はなにかに見つめられている事には気づいていた、がこれは
人ではないとおもえた。 あえてたとえるなら肉食獣のような、
なにか出会ってはならない何かに見つめられている、
死を目の前にしたようなぴりぴりした皮膚感を漠然とかんじていた。

ばっ!ばばっ! 涼はいきなり目の前に腕を振り上げるとなにかの
まじないのように腕を動かし最後に腰に手を当てた。

すると突然腰になにかの装飾品のようなものが出現した、
それはベルトのようにも見えた。

ばっ!

涼は腕をさらに前に振りかぶると大きく叫んだ。

「変身!!」
すると涼の体は空間に引き込まれるようにかき消え、同時に目の前の空間から
緑色の体が現れた。 瞬間の出来事で言葉どおりの変身にも見えた。

そのからだはなにか生物的でもあり着ぐるみのような造形物にも
見えた。 顔にあたる部分には大きな赤い昆虫の複眼のようなものが
二つあり、額には大きな角があった。
巨大な昆虫の仮面をかぶっているようだ。

そう、これが涼のもうひとつの姿。
本人の意思に関係なく突然このからだを授けられ、さまざまな苦しみや
悲しみを受けた。 だがそれをこの仮面に隠して戦う、戦士
仮面ライダーギルス これもまた涼の本当の姿なのだ。

ギルスに変身した涼には人間ではわからないさまざまな光線、異臭、音
が感知できる、ところが不思議な事にまったく生物的な気配は感じない。
先ほど声がしたのだからどこかにいるのは間違いないのだが。

「・・・・確かにいる・・が・・」
ギルスが両手を目の前でクロスさせると両手首から、鋭い突起物が
飛び出す。

と、その瞬間!

フシッ!
ギルスの耳に空気を切り裂く音をキャッチした

ザンッ!!
ほとんど条件反射でギルスは上体をのけぞらしてその空気を切り裂く
物体を避けた。 がその物体はわずかにカーブしてギルスの手の
突起物を簡単に切り裂いた。

「こちらの武器に反応したのか?・・・問答無用・・・って言うわけか」

ギルスはじっとして動かない、集中しているようだ。
「なまじ目で見えないなら・・・」

見た目ではわからないが、ギルスの赤い大きな複眼は今閉じられた状態に
なっていた。だが額にはめ込まれた石のようなものがうっすらと輝く。

フシッ シュッ
又も空気を切り裂く音がどこからともなく聞こえた、しかも今度は二箇所から

じっと立ったままのギルスに見えない何かが襲いかかる。

瞬間・・・ザッ
ギルスは体を前に動かすと、背面をなにかがすれすれで通り過ぎる
そしてもうひとつ・・・ ギルスは握った右手の裏拳でその見えないはずの
なにかを叩き落した。
ギィン!
乾いた金属音とともに そのなにかが地面に突き刺さった。

ジィン・・・ジュウン
突き刺さって初めてそれがなにか原始的な手裏剣のようなものであることが
わかった。 がなにか機械的な音と光を放ち高度な機械の部品にも見えた。

「・・・・ナニモノダ・・・・」 今度はかなり離れた場所から涼の声によく似た
あの声が聞こえた。 「・・・・モノダ・・」 そしてさらに離れた場所から。

しばらくするとなにも聞こえなくなり、ギルスの肌に感じていた緊張感も
それとともに解除された。
「行ったのか・・・?・・なんだったんだ?」

地面に突き刺さったままのその丸い円盤武器をギルスかがんで拾った、と同時に
ギルスの姿がまた涼の姿に一瞬で変わってしまった。

「手がかりはこれだけか・・・」
涼は手にした物をしげしげと見つめたが、遠くからパトカーのサイレンを聞いて
慌ててポケットにしまい、そのままバイクで走り去った。
今までの経験から厄介な事になる前に退散するクセが身についていた。

涼が離れたあと、公園では誰もいなかったはずなのに黒い人影が一人現れ、ギルスの
戦ったあたりを観察し、そののちギルスの消えた方向へと走っていった。

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